一日の仕事の疲れを癒やし、楽しい気分にさせてくれるアルコール。最近では、居酒屋や家で一人飲みをする女性も多いようで、「ほぼ毎日お酒を飲んでいる」という方もいますよね。お酒にはリラックス効果があるといわれており、気分が高揚したり元気になれたりするという優れた一面があります。さらに、ビールの原料であるホップの香りには、気分を落ち着かせるアロマ効果もあるそうです。
しかし、お酒との上手な付き合い方を知らないと、ひどい二日酔いや急性アルコール中毒といった苦しい思いをすることもあります。 また、同じお酒の量を飲み続けた場合、女性は男性の約2分の1の期間で肝臓などの障害を起こしたり、アルコール依存症になってしまったりするともいわれています。飲む量が同じ場合、一般的に体重が軽く肝臓の小さい女性のほうがアルコールの処理に時間がかかりますし、血中濃度が上昇しやすい傾向があります。さらに、女性ホルモンがアルコールの代謝を抑制する働きを持っているため、男性よりも少量のアルコールで、短期間のうちに影響が出てしまうのです。
このように、そもそもアルコールの処理能力が男性より低いという理由もあり、女性がお酒を楽しむためには、自分の体やお酒との付き合い方を知ることが大切なのです。
実は男性よりも増えている?現代女性のアルコール摂取量
それでは、現代の女性はどの程度アルコールを摂取しているのでしょうか。
2008年に行われた全国調査の報告によると、20代前半の女性の飲酒率は90.4%、男性は83.5%と、若い女性の飲酒率は同世代の男性を上回っています(厚生労働省/わが国における飲酒の実態ならびに飲酒に関連する生活習慣病、公衆衛生上の諸問題とその対策に関する総合的研究)。別の調査によると、週3回以上の飲酒習慣を持つ女性は2004年には7.1%でしたが、2014年には8.2%と増加傾向にあり、男性は対照的に減少傾向(38.2%→34.6%)とのことでした(OECD/Tackling Harmful Alcohol Use)。
また、多くの女性が飲酒習慣を持つようになったことで、女性のアルコール依存症も増えているそうです。 以下のデータは、アルコール依存症の疑いがあると判断される人の割合です。2003年の調査を比較すると、アルコール依存症の疑いのある女性の割合は約3倍に増加していますが、男性は約半分に減少しています(厚生労働省の総合的研究報告書2003年及び2008年)。
<アルコール依存症の疑いがある人の率>
男性:1.9%(2003年)→1.0%(2008年)
女性:0.1%(2003年)→0.3%(2008年)
割合だけを見ると大きな数字ではないのであまり深刻には見えませんが、2008年時点でのアルコール依存症の女性は約80,000人、2013年の調査では約14万人にものぼり、増加の一途をたどっています(数字はいずれも推計)。
女性の場合は、30代をピークにアルコール依存症を発症する可能性が高いという調査結果も出ていますので、年々、飲む量や頻度が増しているという方は要注意です。
人によって異なる適正な飲酒量と超過した際のリスク
体に悪影響を及ぼさず、ストレス発散やリラックス効果を与えてくれる程度の飲酒はどのくらいを目安にすれば良いのでしょうか。飲酒量にはそもそも個人差がありますが、東京都福祉保健局では、適切なアルコール摂取量を以下のように示しています。
<1日あたりの適切な純アルコール摂取量>
男性:40g未満
女性:20g未満
上記を超えての飲酒は、さまざまな健康問題のリスクが高まるといわれています。飲酒習慣がある方は、まったくない方と比べると「脳卒中」や「脳梗塞」「乳がん」の発症リスクが高まるという研究(国立がん研究センター/2004年・2010年・2013年発表)もありますので、お酒の過剰摂取、飲みすぎには注意しましょう。
なお、純アルコール摂取量は、お酒に含まれるアルコールの量となりますので、お酒の種類や飲み方によって、お酒の摂取可能な量は異なります。例えば、ビールであれば500ml(中瓶1本)で約20g、ワイン120mlグラス1杯)で約12g、25度の焼酎180ml(1合)で約36g、ウイスキーやブランデーの場合には60ml(ダブル)で約20gのアルコールが含まれています。
さらに、1日の摂取量が上の数字以下であれば、毎日飲んでも良いというわけではありません。週に何日かはお酒を飲まない「休肝日」を設けるようにしましょう。できれば、連続して2日以上の休肝日を取るようにしてください。
また、当たり前ですが未成年者や妊娠中、授乳中の飲酒は、おなかの子供に悪影響を与えます。特に女性は、気が付かないうちに妊娠しているケースもありますので、自身の生理週間を把握したり、基礎体温表をつけたりすることも、お酒と上手に付き合っていくポイントとなります。
飲酒して良いときと悪いとき、飲酒前のケアとは
最後に、お酒を飲むときに気を付けるべきこと、飲酒前後にしておいたほうが良いことを紹介します。悪酔いや二日酔いを防ぎ、トラブルなくお酒を楽しむためにはとても大切なポイントですので、ぜひ覚えておきましょう。
・空腹時にお酒は飲まない
お酒はなるべく食事といっしょに、ゆっくりと楽しみましょう。空腹時に飲酒するとアルコールの血中濃度が急速に上がってしまい、悪酔いしたり急性アルコール中毒を引き起こしたりすることがあります。なるべくお酒は薄めて、時間をかけて摂取するようにしてください。
・寝るまえの飲酒は控える
眠りに入りやすくするためにお酒を飲む方もいますが、寝るまえの飲酒は睡眠の質を下げます。浅い眠りでは、1日の疲れを取ることはできませんので、寝酒は控えるようにしましょう。
・服薬中は断酒する
お酒を飲むことで、薬の効果が強まったり弱まったりすることがあります。薬による治療中は、お酒を飲まないようにしましょう。
・飲酒後の入浴、運動は禁止
お酒を飲んだあとに運動したり、お風呂やサウナに入ったりすると、不整脈や血圧の変動を起こすことがあり、たいへん危険です。さらに、お酒は判断力を鈍らせるため、運動中のケガなどを引き起こしやすくなります。
・肝機能を向上させる食品を活用する
飲酒が続いたときや体調が優れないときは、なるべく飲酒は控えてください。それでも、どうしてもお酒を口にしないといけない場合は、肝臓のアルコール代謝を助ける作用のある食べ物などを事前に摂取しておきましょう。牛乳、豆腐、チーズ、甘柿、ウコンなどがそれにあてはまります。
このようなポイントを押さえつつ、自分のアルコールの許容範囲を知っていくことがお酒との上手な付き合い方の第一歩です。周りのペースに合わせて無理することなく、お酒を楽しんでください。