最近、サプリメントや健康食品などでよく見る栄養素「オメガ3脂肪酸」とは、どのような働きをしてくれるのでしょうか。病気予防やアンチエイジング、女性に良いなどの評判を耳にしますが、体にどのような影響を及ぼすのか、マイナス面はないのかなど気になりますよね。
そこで、話題のオメガ3脂肪酸について、その効果と効能、上手な摂取方法などをまとめました。
オメガ3脂肪酸とは、構造の中に炭素の結合を2つ以上持つ「多価不飽和脂肪酸」のひとつです。多価不飽和脂肪酸は人間の体内で生成することができないため、食品から摂取する必要があり、栄養学では健康のために意識してとるべき「必須脂肪酸」と位置付けられています。
具体的には、α‐リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などを総称してオメガ3と呼んでおり、DHAやEPAはα‐リノレン酸をもとに体内で合成されます。
オメガ3脂肪酸の1日の摂取量の目安は、30~40代の男性で2.0g以上、女性で1.6g以上です。また、妊娠中・授乳中の女性は、胎児や乳児に適切な栄養を送るという意味合いもあり、目安は1.8gと設定されています。実際の食事に置き換えると、生の魚(お刺身など)が100gあたり約1.0gのオメガ3脂肪酸を含んでいますので、これを目安に考えるといいでしょう。(魚の種類によって数値は異なります)
オメガ3脂肪酸の食事摂取基準(日本人の食事摂取基準2015年版/厚生労働省)
≪男性≫
18~29歳→2.0g以上
30~49歳→2.1g以上
50~69歳→2.4g以上
70歳以上→2.2g以上
≪女性≫
18~29歳→1.6g以上
30~49歳→1.6g以上
50~69歳→2.0g以上
70歳以上→1.9g以上
妊婦→1.8g(目安量)
授乳婦→1.8g(目安量)
このように体に良いオメガ3脂肪酸ですが、過剰摂取を続けることは「男性の前立腺がんのリスクを高める」可能性があるといわれています。食品ではなく「サプリメント」で摂取する際は、飲用方法や用量をしっかり守るようにしましょう。
男女を問わず体に良い影響を及ぼすオメガ3脂肪酸
北極地方やカナダなどの氷雪地帯に住む、先住民族のイヌイット。世界で最も脂肪の多い食事をしているといわれる人々ですが、その血液はサラサラで血中コレステロール値や中性脂肪値も正常という調査結果があります。
彼らはアザラシやシロクマを捕らえて食べますが、実はその肉に多くのオメガ3脂肪酸が含まれていることがわかりました。アザラシやシロクマの主食は魚ですが、北の寒い海に生息する魚にはDHAやEPAが多く蓄えられています。この食物連鎖の過程で、多くのオメガ3脂肪酸を摂取することになり、血液や血管が健康に保たれているのです。
イヌイットの調査結果でも判明したように、オメガ3脂肪酸には血液をサラサラにする効果があります。血流を改善し、血栓に対する効果もあるため、血管が詰まることによる心疾患や脳疾患のリスクを低減します。さらに、コレステロール値や血圧を低下させる働きもありますので、「生活習慣病の予防」や「妊娠中毒症の予防」にも効果があるとされています。
また、DHAは胎盤を通って胎児に移行し、脳や網膜の神経細胞の材料となります。
妊娠中にオメガ3脂肪酸が不足すると、早産や低出生体重児出産のリスクが高まるともいわれており、妊娠中の女性は普段以上に摂取するべき栄養素といえるでしょう。
また、最近の研究により、オメガ3脂肪酸由来の「抗炎症性代謝物」の存在も確認され、これらが炎症の抑制に関係していることがわかりました。これによりアレルギーの抑制効果が期待できるとして、さらに注目度が高まっています。ほかにも、「視力回復」「記憶力・判断力の向上」「ストレスを緩和する」といった働きもあり、その効果は多岐にわたるようです。
こんなにある!オメガ3脂肪酸によって予防効果のある病気と症状
前述のように、オメガ3脂肪酸の摂取は体にさまざまな影響を及ぼします。その結果、下記に挙げた病気や症状の予防、緩和につながるといわれるようになりました。
- 高血圧
- 糖尿病
- 血栓性静脈炎、深部静脈血栓症
- 乳がんなど、一部がんの抑制
- 不整脈の発生防止
- ストレス緩和
- アレルギー症状の緩和、改善
さらに、妊娠中や授乳中の女性が摂取すると、赤ちゃんの体の発達・発育にとても重要な働きをすることもわかってきました。母体が摂取したオメガ3脂肪酸は赤ちゃんのアレルギーの低減に影響するといわれ、その重要性を認識した厚生労働省は、積極的な摂取を呼びかけています。
これを食べて健康になろう!オメガ3脂肪酸を多く含む食品まとめ
α‐リノレン酸は「亜麻仁油」「エゴマ油」「チアシードオイル」などに多く含まれています。DHAとEPAは魚の油に含まれる栄養素で、おもに「イワシ」や「サバ」などの青魚に多く含まれています。
オメガ3脂肪酸を食品から摂取したい場合は、料理に亜麻仁油やエゴマ油、チアシードオイルを取り入れ、青魚を積極的に食べる事が必要となります。
α-リノレン酸を多く含む食材
チアシードオイル |
約60% |
エゴマ油 |
約59% |
亜麻仁油 |
約58% |
しかしながら、オメガ3脂肪酸は、火を通すことで酸化しやすい性質を持っており、「150℃以上の過熱で酸化」するといわれています。そのため、亜麻仁油やエゴマ油、チアシードオイルは調理油としてではなく、ドレッシングなど非加熱で、魚も刺身の使い方がおすすめです。また、ビン開封後は、1ヵ月程度で使い切るようにしましょう。
オメガ3脂肪酸を効果的に摂取するためには、イワシ等の魚もなるべく火を通さず、「お刺身」や「マリネ」などにして食べるようにします。魚だけで1日に必要なDHA・EPAを摂るのは難しく、妊娠している女性が生魚を食べることはあまりおすすめできません。厚生労働省でも「魚に含まれる水銀がある一定以上になったときにお腹の中の赤ちゃんに影響を与える可能性が指摘されている」と注意を呼び掛けています。
オイルもそのままの状態で毎日摂るのは習慣になりづらく、金銭的にも継続が難しいものです。無理にメニューに加えるのではなく、「サプリメント」を活用しましょう。
サプリメント活用が有効!
幅広い健康効果が望めるオメガ3ですが、オメガ3を多く含む油は上記で述べたように酸化しやすいため、加熱せずに使う、早く使い切る、冷暗所で保管するといった注意が必要です。
手軽にオメガ3を摂るにはサプリメントの活用がおすすめです。オメガ3のサプリメントの多くは青魚から摂れる動物由来のものであるのが現状ですが、妊娠前後にも必要と言われていながら水銀の影響も指摘されているので植物由来のものが理想ですよね。植物由来のオメガ3サプリメントは品質の管理と大量生産が難しい事から、サプリメントとしては少ないですが安心して続けるには植物由来がおすすめです。
中でも、オメガ3を多く含む植物由来のチアシードオイルには抗酸化作用をもつビタミンEが豊富に含まれており、酸化しにくい特徴をもっているので効率的にオメガ3が摂取できます。